テレワーク・リモートワークを攻略し厳しい労働市場を生き抜く術を手に入れる!

昨年の 12 月から中国武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
このニュースが大々的に流れてきたのは先月1月半ばぐらいのことですが、あれからたった一か月超で既に全世界に広がっており、世界各国で封じ込めに必死になっている様は、ここフィリピンからでもヒシヒシと感じています。
現時点ではまだウイルスの拡散封じ込めが急務と言われている中、つい先日電通や資生堂など日本の大企業が原則としてテレワークに移行するというニュースが流れてきました。
この他、富士通やパナソニック、東芝、ソニー、NECなどの電機各社、トヨタ、日産など自動車メーカー、NTTグループなど電気通信、商社、食品メーカーなど、次々とテレワークを活用した業務体制に切り替えていっているようです。
当記事では、これまであまり一般にはあまり馴染みのないテレワークと今後変わっていくであろう日本の労働市場、厳しい労働環境を生き抜く術を考察していきます。
※当記事は新型コロナウイルスの感染、予防等の情報を掲載するものではありません。
テレワークとは?
テレワークとは、リモートワークという言い方もありますが、英語のtelecommutingとworkを掛け合わせた言葉で、会社に出社せずに勤務を行う、簡単にいってしまえば在宅勤務を指します。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡散を封じ込めるため、昨今、大規模イベントや集会などの活動を中止する呼びかけが報じられていますが、今回のテレワーク拡大もその延長線上にあるものと考えられます。
テレワークの特徴
テレワークは、実は海外では既に一般的な働き方の一種です。
これは、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の発達に伴い、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働くことができる環境が整ってきたためです。
また情報通信技術(ICT)の発達は、事業における世界の国境、時差という壁をも取り払ってしまいましたので、より柔軟な事業活動を展開するという意味でも非常に重要な考え方でもあります。
テレワークの利点には以下のようなことが挙げられます。
- 通勤地獄不要
連日の超満員電車での通勤地獄は、それだけで体力、気力を奪われるだけではなく、通勤する時間がかかる訳ですが、在宅勤務であればその時間を家事や余暇に充てることも可能になります。 - 通勤が困難な人でも働ける
妊娠、育児、介護、身体障碍など、通勤は難しいけど、在宅なら働けるという人の雇用、勤務を可能にします。
テレワークの働き方
例えば、業務をこなす上で必要とされる上司や同僚、部下とのコミュニケーションは、電子メールやチャットといった通信媒体を活用することで、時間や場所の制約を取り払うことができます。
会議などもSkype(チャットアプリ)やZoom(オンラインセミナー、ミーティングアプリ)を使うことで会社の会議室に集わなくても可能になります。
文書のやり取りなどもDropboxやGoogleドライブなどのアプリケーション経由で共有できますので、業務の種類にもよりますが、特に人事や経理、会計などの事務職、IT系業務などは、パソコン一台とインターネット、アプリケーションでほぼ完結することが可能となるのです。
先にも述べましたが、通勤時間がなくなるため、その分時間を有効に活用することが、雇用、労働者側双方のメリットになるのですね。
日本におけるテレワークの問題点
もちろん実際の働き方は、会社の事業体制や方針、職種、業務内容により異なりますし、文書のやり取りなど、会社の機密情報保全などの理由からオンラインシェアできないなどの問題が生じることもあり、必ずしも100%テレワークに移行できる訳でもありません。
またこれは日本に限ったことではありませんが、接客や工場作業など実際に現場にいないと仕事にならない職種はテレワークには移行できません。
曖昧な職務規定
今回の大企業の措置は、言わば緊急事態であるためこれほど大規模なテレワーク移行が一気に進みましたが、日本にはテレワークを阻む大きな要因があったため、これまではそれほど普及はしませんでした。
それは日本の会社の労働に対する考え方とそれに基づく雇用体制、習慣にあります。
日本の会社勤めは、顔を突き合わせて仕事しないといけないみたいな習慣がありますよね?
先日テレワークについてこんなツイートを見かけました。
テレワーク中に家事などを行う際には上司に報告し、許可を得なければならないというもので、都度「10分ほどお皿洗いします」みたいな報告するんか?みたいなもの(笑)
まさに本末転倒というか、日本でテレワークが推進されない理由はまさにこんな働き方が要求されてしまうからなのですね。
そこに合理性や根拠はなく、上司が見てないとさぼるだろ?みたいな、上司から見た部下への不安感などもテレワークの推進を阻む要因ですね。
この問題の根底には、日本の会社では各職務規定や業務範囲、裁量権などが明確に定義されていないという日本の雇用体系の不備が横たわっています。
例えば、お茶くみや雑用など、本来の職務とは関係ない仕事が当然のように課せられたりすることってありますよね?
「ちょっとこれやっといて!」みたいな、イレギュラーな仕事の割り振りなども日々頻繁に発生しせます。
実際のところ何の職種で働いているのかわからん!なんてケースも多いのではないでしょうか?
日本では「会社に行く、会社にいる、机に向かう、会議に出る」などの姿勢・態度が重視され、なんとなく「やってる感」が評価に繋がるケースが多く、それが見えないテレワークでは仕事になどなるはずがない!という感覚に陥ってしまうからではないかと思われます。
ジョブ・ディスクリプションとは?
テレワークがいち早く採用され、働き方の一種として定着している海外では、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書、要件書)で働く側の職務・業務範囲及び賃金を明確に規定しています。
これは企業が労働者を採用する際に必ず規定、提示しなければならないものであり、企業はその規定に合致する労働者を採用、労働者はその規定に沿って職務を遂行し、企業はその規定に沿って労働を評価する役割を持ちます。
日本の企業にも職務規定書などがある場合もありますが、日本の場合は具体的な職務記述というより、合理的な評価基準になり得ない精神、ルール、マナーといった働く姿勢や態度などに重きが置かれていることが多く、ゆえに「ちょっとこれやっといて」みたいな曖昧な仕事の進め方が横行してしまうケースが大半だと思われます。
仕事とは「やってる感」のような曖昧な評価ではなく、仕事の質と量=評価/対価という考え方こそが最も重要であり、これにより顔の見えないテレワーク、在宅勤務が初めて実効果が生まれるのですね。
日本では特に新卒採用の場合では、特に業務知識やスキルは要求せず、学歴や人柄などを重視し、これは未経験者を育てるという考え方に重きが置かれていますが、海外では即戦力、採用された時点ですぐにその仕事ができる知識、経験、スキルなどが要求されるなど、採用面においても海外の企業とは考え方が異なります。
このような雇用側、労働者側のニーズ、雇用体系に合致させるために最も重要な要素がこのジョブ・ディスクリプションで、これにより仕事の質と量を詳細に規定し評価するという考え方が海外企業では一般的なのです。
IT知識、技術の欠如
テレワークは在宅で業務を行うものですので、その仕事の実現に不可欠なのがパソコンのスキルです。
文書作成やコミュニケーションなど業務の大半はパソコンでの仕事になるので、このパソコンのスキルがないと仕事になりません。
概して日本の企業の標準的ITスキルは決して高いものではなく、特に管理職を含めた中高年齢層のITスキルは壊滅的というケースが多いですよね。
また日本のパソコンスキルを含めたIT知識、スキル教育も欠如しており、若年層でもパソコンが扱えないという問題もあるようですので、このような点が日本でのテレワークの普及を阻む要因だと考えられます。
世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92085.php
引用
経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA2018」の結果によると、日本の生徒(15歳)の読解力は15位となっている。
この記事では、日本の生徒のパソコン使用率は低く、先進国どころか発展途上国と比較しても低いということが指摘されていますが、まず家庭、学校での機材環境がないことやスマホで充分などと考えられていることが要因と指摘されていますが、このような背景が企業のIT化を阻む要因にもなっていますね。
今後主流となる働き方とは?
今回はコロナウィルスの拡散防止という、いわば非常事態の中で大企業を中心に取り組まれているこのテレワーク。
このテレワークのさらなる普及には、前述したような日本の雇用システムや働き方、マインドなどを変革する必要もあるのですが、今回の件で一度普及してしまえば今後さらなる加速につながる可能性も高いと思われます。
労働者側にはこの働き方の変化に柔軟に対応することが求められるようになり、逆にそれができる人材には就職や起業に対する優位性が生まれるようになるでしょう。
IT業界、フリーランスに最適なテレワーク
私はITエンジニアですので、実はもう10年以上このテレワークという働き方をしています。
会社に雇用されている訳ではないため、オフィスに行く必要がもともとないのですが(笑)
クライアントのWebサイトやシステム、アプリなどの制作、開発などが主な仕事内容なのですが、そこに付随する仕事、受注から納品までに発生する全ての業務(打ち合わせや文書、ファイルのやり取り等を情報通信技術(ICT)で完結させています。
この10年超の間、無数のクライアントと取引をし仕事を行ってきましたが、実際にクライアントに会ったことがあるケース自体、全体の10%にも満たないと思います。
また現在はフィリピンに在住していますが、逆にこの情報通信技術:ICTがなければ仕事が成立しないということになりますね。
一時期、ノマドワークなる言葉も流行りましたが、実はIT業界ではこのテレワークは既に一般的な働き方となっているのです。
テレワークの先にあるBPOビジネス
ここフィリピンではBPOと呼ばれるビジネスが盛んです。
BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略なのですが、つまり業務アウトソーシングを意味します。
企業の事業活動の一部を外部リソース(他社・フリーランス)に委託するというのがこのBPOです。
BPOビジネスはIT技術との相性がいいことから、Webサイト制作やシステム開発、広告などのデザイン、執筆などの業務が早くからアウトソーシングされていきましたが、現在では事務や経理、人事、総務などの一般職も多く扱われています。
フィリピンは英語力が高いことから、多くの外資系企業がフィリピンにアウトソーシングするようになり、最も多いBPOビジネスはコールセンター事業です。
私のかつての部下も独立し、現在BPO事業を扱う会社を興し、世界中のクライアントからこれらの業務を受託しています。
フィリピンは日本よりはるかに格差が激しいため、給与水準も低く、雇用も安定していなかったのですが、このBPOビジネスにより雇用が広がり、そのスキルを持った人材が多く登用されるようになりました。
企業にとっては、人を採用する、教育する、雇用するといった人件費が最も高いウエイトを占めるため、必要な業務だけを外部にアウトソースすることで人件費を大幅に削減することが可能となり、またその業務を専門とした高い技術を持つ企業、人材のサービスを受けることができるという一挙両得が得られるため、このBPOは現在では世界中で採用され、その受け入れ先として選ばれているのがフィリピンやインドなどです。
今回の非常事態以前日本では経済成長の鈍化、低迷により終身雇用など日本の雇用体系もすでに崩れ始めていることもあり、今後はますますこのにテレワーク→BPOの流れは加速すると思われます。
厳しい労働市場を生き抜く術とは?
今後は日本でもただなんとなく会社に行って仕事してる風でも良しとされた労働環境は淘汰され、質の高いサービスが提供できる知識、経験、スキルを持った人材が要求されるようになると思われます。
そんな厳しい労働市場を生き抜く術は、プロフェッショナル化です。
業務のプロフェッショナルになる
このような労働環境の変化に対応すべく、労働者側も仕事に対する考え方、姿勢を変えていく必要があります。
私のようにクライアントと顔も合わせない業務でクライアントから支持を受け、10年超に渡り継続して仕事ができている理由はIT事業におけるプロフェッショナルだからです。
IT事業の場合、前述したジョブ・ディスクリプションのように要求される仕事の質と量が定義しやすいという面もありますが、当然その仕事をクライアントの要求どおりにしっかり熟せるスキルが不可欠です。
この、特定する職務・業務をこなす知識、経験、技術を持ち、要求される要件をしっかり充足させられる人材がプロフェッショナルであり、今後はさらにどのような職種においてもプロ化が求められていくと思います。
前述紹介したフィリピンのBPO事業環境においては、高い英語力を有する、IT知識、経験、技術があり、しっかり職務要件を充足できる人材が有用され、給与水準も決して低くはありません。
逆に言うと、それらのスキルがない、高くない労働者は人材とみなされず、これまでのような低賃金労働に従事せざるを得ないということになり、その構図は変わらないのです。
プロフェッショナル人材となることが今後ますます厳しくなっていくであろう労働市場を生き抜くカギです。
労働者としての意識改革
日本はアジアでいち早く経済大国、先進国なった国ですが、この情報通信技術(ICT)をベースとした世界経済の潮流、労働環境の変化に対応できなかった点が世界に後れを取ってしまった一番の要因であることは否めません。
いまだにFAXやハンコによる決済フローなど決定プロセスも遅く、仕事の質やスピード、結果より、日本独自の働き方、プロセスを優先、重視してしまうという、要は日本の文化、習慣、マインドに基づく労働環境、意識が世界標準とかけ離れてしまったことが敗因の一つでもあるのですね。
今後日本の労働環境がどのように変化していくのかはわかりませんが、いずれにせよ劇的な経済成長が遂げられるようにならない限り、引き続き人件費削減という厳しい現実が労働者側につきつけられていくことは間違いないと思われます。
IT業界だけをとってもプログラミングやデザインといった技術職以外にも要求されるプロ職種はありますし、情報通信技術(ICT)と親和性の高い一般職、経理や会計、事務系職種などにもプロ化要求の流れは避けられないでしょう。
逆にテレワーク、情報通信技術(ICT)をベースとした仕事をこなせるプロフェッショナル人材となれば、厳しい雇用環境でも生き抜いていける術を手に入れたことにも繋がり、例えば私のように日本を出て、生活コストの安い東南アジア諸国に移住するということも可能になります。
また情報通信技術(ICT)とは一見無縁と思われる職種、例えば日本食料理人やすし職人、美容師、特殊工員なども海外市場においては需要が高いですので、海外の労働市場をターゲットに技術系、専門職系を選ぶ、転換するというのも得策でもあります。
一番厳しい状態に追い込まれるのは、ただ会社に出社し「やってる感」のみでしのいできた中高年層、「使えないオッサン」は淘汰されていくことは避けられないと思います。
昨今では大企業を中心に中高年層社員の早期退職など人員整理のニュースが頻繁に流れてきますが、今後はその流れは間違いなく加速していくはずです。
これまでのプロセスを重視する日本型の評価体系から、今後は成果主義に移行していくことが考えられるからです。
成果主義とはテレワークにおいても最も重要な要素でもあるのですが、働き方や仕事の時間、場所などのプロセスは問わないが、与えられたタスクを指定期間内に指定する品質で提供、納品するという成果をもって評価とする考え方です。
プロフェッショナル化に通じることでもありますが、働く側にもこのような意識改革が必要となってくるでしょう。
私が35歳の頃、それまで勤めた一般職系からIT系技術職に転向しようと決断したまさに、このままでは「使えないオッサン」化し、労働市場から締め出されてしまうかも・・・と危機感を持ったからなのですね。
現実問題としてその後次々襲ってきた苦難をなんとか乗り越えられたのも技術職に転向できていたおかげで、それがなかったらまだにジリ貧で今頃どうなっていたことか・・・
日本の企業の一般職はまさにこんな「使えないオッサン」大量製造マシンのようなもの。
もちろん一般職からプロフェッショナルに転向できる職種もありますし、つぶしが効かなくなるかも?と思えるのであれば、早めに転向するのが得策かもしれません。
なんにせよ企業は社員の生活を一生保証してくれるわけでも、会社勤めが将来安泰の担保になるものでもありません。
今後は自らスキルを磨き、経験を積み、市場から求められるスペシャリスト、プロフェッショナル人材を目指すなど、自己防衛していく意識が大切です。